坂元 明
額賀 理
奧出 聡
対象物の距離変位を測定する石英ロッドレンズ型変位センサの検討を行い、その応用として光圧力センサを開発した。ロッドレンズによるセンシング方式は、光通信用部品で用いられているため、低コストの光センシングシステムを実現できる。本稿では、ロッドレンズを用いた圧力センサの原理?特性、および測定精度について検討を行った結果を報告する。
近年,フォトニック結晶ファイバあるいは,ホーリーファイバと呼ばれる,長手方向に空孔を有する光ファイバが従來の光ファイバでは得られない特性が実現できるとして注目を集めている.今回われわれは,この中でフォトニックバンドギャップファイバに注目し,広帯域化,表面モード抑制という2つの課題を達成するために,キャピラリコアと拡張三角格子クラッドを持つ,新しいフォトニックバンドギャップファイバを提案した.計算により,提案するファイバは広い波長範囲にバンドギャップを持ち,表面モードが存在しないことを確認した.また, 実際にファイバを試作し,1,520nm~2,100nmの広い範囲で透過を確認した.
周波數0.8~2.6GHzで使用されている攜帯電話,PHS,無線LAN,モバイル放送用の送受信アンテナとして使用可能な2種類のギガヘルツ対応広帯域漏洩同軸ケーブル(Wide-band Leaky Coaxial Cable,以下WBLCXTMと略す.)を開発した.布設時の取扱い性を重視した外徑18mmの細徑WBLCXでは,周波數2.6GHzにおいて,結合損失59dB,減衰量14.5dB/100m,また,長距離での使用を可能とした外徑29mmの低損失WBLCXでは,結合損失58dB,減衰量9.5dB/100mの優れた性能を得た.これらのWBLCXは,障害物の多い空間や狹く曲がりくねった空間など,電磁波の伝搬しにくい環境に特に有用である.
近年のデジタル電子機器の小型化トレンドにともない,回路基板に代表される內部部品にも小型化と高耐久性の要求が厳しくなっている.回路高密度化を目的とした基板多層化に欠かせないスルーホール接続に関して工法から改めて検討し,市場最小クラスであり,かつ高耐久性?低コストのメンブレンスルーホール構造と製法を開発した.デジタルカメラ?デジタルビデオカメラ?攜帯電話等への用途として適しており,製品への採用がはじまっている.
フレキシブルプリント基板(FPC)に高周波信號を伝送する場合,信號の反射による波形ひずみを防止するためにインピーダンスを整合する必要がある.また,高周波で使用するとFPCの減衰量が大きくなるので,回路設計を行う上で,減衰量の周波數特性を考慮する必要がある.今回,グランド層をメッシュ構造としたときのインピーダンス整合とFPCの減衰量の周波數依存性について報告する.
近年,日本の自動車メーカーは相次いで各種モジュールを導入している.今後モジュールの導入が進展していくと多くの補機がモジュールへ統合され,車體側ワイヤハーネスとの接続は補機個々に接続を行った形態からモジュールの車輌組付け時に一括接続する形態に変化して,コネクタの多極化が進行していく.
この狀況を捉えて,モジュール部品を車體に搭載する際の嵌合作業性を大幅に向上させることを可能にしたコネクタを開発したので報告する.
イットリウム系酸化物超電導線(Y-123超電導線材)は,既存の超電導線の中で最も高い臨界電流密度Jcを広い溫度領域で実現できるといわれ,従來にない小型で高性能な超電導機器が実現される可能性が期待されている.當社で開発したイオンビームアシスト蒸著(Ion-Beam-Assisted-Deposition:IBAD)法をはじめ,近年の真空技術の進歩により100m級の線材が複數の研究機関で作製されるにいたった.すでに実用長とされる500m級線材の開発が始まっており,コイル試験等による実用線材としての検証も開始されている.
パソコンやテレビ,攜帯電話などのディスプレイ用透明導電基板として広く使用されているスズドープ酸化インジウム(ITO)は,高価であるとともに資源として希少なインジウムを主原料としており,近年の使用量の増大にともなう価格高騰や安定供給への要請から,その代替となる酸化物透明導電膜(TCO膜)の登場が期待されている.われわれは資源量?価格ともに安定しているスズを主原料としたフッ素ドープ酸化スズ(FTO)に注目し,成膜條件の自由度の高いスプレー熱分解法を用いて,膜性能の向上に向けた検討を進めてきた.この結果,ITOの代替材料として期待できる2.8×10-4Ωcmの低抵抗化に成功するとともに,透明でかつ熱線反射性能に優れたFTO基板を開発した.
様々な形態の大面積色素増感太陽電池(DSC),およびそれらを使ったモジュールを開発した.これらの大型セル作製には,一貫してスクリーン印刷法を用い,より実用に近い製造方法で行った.この印刷技術を基本とする作製方法には,これまで自社開発してきた要素技術であるナノコンポジットイオンゲル電解質や,導電性ペーストで構築した集電配線つきの透明高導電ガラス基板を組み合わせて採用した.またこれらのモジュールは,愛?地球博をはじめとする様々なイベントで展示を行った.
近年,通信の高速大容量化にともない使用周波數帯の高周波化が進むとともに,高周波帯域で減衰量が小さい同軸ケーブルが求められている.高周波同軸ケーブルの絶縁體材料には,比誘電率εrと誘電正接tanδが低いポリエチレンが用いられ,かつ,発泡成形がなされている.今回,さらなる減衰量低減のため,溶融特性,誘電特性共に優れる新規材料を開発し,従來不可能であった発泡度85%の超高発泡度同軸ケーブル用絶縁體を開発した.
モバイル機器の高性能化に伴い,電子デバイスのさらなる小型化,薄板化が盛んに検討されている.半導體IC のウエハレベルパッケージングもその技術の一つであるが,當社ではさらにMicro Electro-Mechanical Systems(MEMS)加工技術によって形成したシリコン貫通配線を組み合わせることで,イメージセンサやMEMSデバイスなど,特殊機能を有するデバイスのウエハレベルMEMSパッケージングを可能にした.本研究では実デバイスを模擬して,イメージセンサやMEMSデバイスが必要とする空隙(キャビティ)を8インチウエハ上に高さ20µmで形成し,ガラスを貼り合わせたサンプルを試作した.ウエハは厚さ200µmで,直徑80µmの貫通配線を形成している.また,試作プロセスを最適化することにより,はんだリフロー工程を除く全工程で150℃以下の低溫化を達成した.
自己融著エナメル線SLB-FTは,1980年代よりハーメチックモータシステムに使用されている.近年,その優れた特性が見直され,大きな需要がでてきている.しかし,SLB-FTは二つの技術的課題によりある種のモデルへの適用が制限されていた.課題の一つはSLB-FTが冷凍機油中に添加される極圧剤を減少させる恐れがあること,もう一つは高占積率の機種への巻線が難しいことである.新規耐冷媒性自己融著エナメル線SLB-FMは,上記課題を解決したものであり,さらに耐熱性などの特性も従來のものより向上している.