堀本 啓一
野口 善清
平船 俊一郎
酒井 哲彌
光學式センサは優れた電磁環境耐性,遠隔計測や多數點計測が容易などの利點がある.しかし,測定系が高価なため適用が限定されている.そこで當社では,3 心光ファイバアレイを用いた安価で高精度な光學センシング方式を開発し,溫度センサと圧力センサを実現した.これらを組み合わせ,溫度補償型水位センサを作製し,全溫度範囲で精度± 0.3 %F.S.を達成した.
短距離での高速伝送システムに適用可能な細徑コアを有するポリマクラッドファイバの検討,試作を行った.本ファイバとVCSEL 光源を用いることにより,伝送距離20 m,伝送速度2.5 Gbps までエラーフリー伝送が可能であった.また,接続軸ずれに対して許容度が高いこと,小徑に曲げた場合でも十分小さな曲げ損失を有することを実験的に確認した.
石英系光ファイバは,放射線環境下で使用されると,放射線に起因する透過光量の減少が生じる.今回われわれは,コアに最適な濃度のフッ素を添加することにより,國際標準規格ITU-T G.652.B に準拠し,かつ従來の純粋石英コアタイプの光ファイバに比べて優れた耐放射線特性が得られることを確認した.この耐放射線光ファイバは,従來の純粋石英コアシングルモード光ファイバがγ線照射1.0 × 106 R / h,60 分において約 25 dB / km の損失劣化を生じるのに対して,約 5 dB / km まで低減され,さらにその回復特性もきわめて優れていることが確認された.
Fiber To The Home(FTTH)における光コネクタの取り付け作業では,メカニカルスプライス方式の現場組立光コネクタが一般的に使用される.しかしFTTHシステムの中には,低反射接続やケブラ入り光ファイバコードとの堅牢で容易な接続が要求される場合がある.この市場要求に応えるため,容易な組立作業性と高信頼性を実現した融著型現場組立光コネクタとその周辺工具を開発した.
Fiber To The Home(FTTH)を経済的に構築するネットワークとしてPassive Optical Network(PON)システムが広く普及してきている.PON システムでは,1 本の光ファイバを複數のユーザが共用するため,光信號を分岐する光スプリッタが不可欠となる.近年,光スプリッタの敷設工事を簡素化するため,モジュール化,コネクタ化されたPlug & Playできる構造が求められている.また,光スプリッタモジュールは,屋外に設置されるため,厳しい環境に耐えられる高い信頼性が必要であり,さらに,小型化,低コスト化も要求される.そこで,當社では経済性に優れた難燃プラスチック樹脂を筐體に用いて,屋外設置環境に耐えられる光スプリッタモジュールを開発した.光スプリッタモジュールは,良好な光學特性を有し,十分な信頼性があることを確認した.
FTTH の普及にともない市街地の架空配線エリアでは架空光ケーブルの輻輳化が問題となっており,スパイラルハンガなどを用いて1 本の吊り線に多條の光ドロップケーブルを吊架する布設方法が一般的となっている.同一のスパイラルハンガ內に多條の光ドロップケーブルを布設する場合,既設の光ドロップケーブルと後から引き込む光ドロップケーブルとが擦れ合うため,光ドロップケーブルの外被の低摩擦化および高強度化の要求が高まっている.布設作業性を向上させることを目的として,低摩擦?耐摩耗光ドロップケーブルを開発した.また,CD 管などの電線管への通線作業性を向上させることを目的として,超低摩擦光インドアケーブルを開発した.
フレキシブルプリント配線板(FPC)上に,エッチングプロセスにより形成した受動部品を積層することで受動部品內蔵FPC を作製した.內蔵された部品の電気的な特性は,エッチングにより形成される部品の構造により制御可能であることを示した.
複數の配線層が積層されたプリント基板における層間接続技術として,従來スルーホール(TH)あるい はレーザビアホール(LVH)などが用いられている.それらに加えて,全く新しい接続技術として,銅ボー ルを用いた層間接続技術(CBIC)の開発に著手した.これは,銅ボールと銅箔を高溫下で圧接することで, 両者が強固に密著することが明らかとなったためである.CBIC は従來技術と比較して,工程不良の削減, 接続信頼性の向上などの効果が期待される.
近年の自動車では,ブランドやグレードを差別化するためにLED を使った積極的なデザインの照明やイルミネーションが採用されている.今回,車載向けにライン狀導光體(商品名「イルミロッド」)を使用したバックライト用の光源を開発し,量産化したので報告する.開発段階では追加工品による迅速な試作で顧客のニーズを明確にし,量産向けには射出成形品で同等の性能を再現することができた.
イットリウム系超電導線材は,高い通電特性を有しているため,変圧器,モータ,限流器などの各電力機器への応用が検討されている.當社では,Ion Beam Assisted Deposition(IBAD)とPulsed LaserDeposition(PLD)法を用いてイットリウム系超電導線材の開発を行っている.本報では現在の線材開発の狀況と,開発した線材を用いた伝導冷卻型マグネットの通電試験の結果について報告する.
植物由來ポリマであるポリ乳酸は,生分解特性だけでなく,化石資源の節約やCO2 発生量低減の観點から,対環境性の良いプラスチックといわれている.既にいくつかの商品で実用化されているが,電線での実用化はされていない.そこで,當社では,ポリ乳酸と柔軟化処方を施したポリ乳酸で絶縁電線を試作?評価し,ポリ乳酸の電線への適用の可能性と課題を検討した.
高精度化,圧力レンジや動作溫度範囲の拡張,あるいは駆動電圧や出力電圧範囲の変更など,多様化するユーザニーズに対して柔軟に対応可能な汎用圧力センサとして高性能でカスタマイズ性に優れる,Si圧力センサチップとその信號処理チップを分離したいわゆる2 チップSi 圧力センサを開発して,- 40 ~125 ℃の広い溫度範囲で動作し,0 ~ 85 ℃における総合精度± 1.5 %FSを達成した.