木村 直樹
大道 浩児
大橋 正和
田中 大一郎
サイアロン蛍光體は,青色光を吸収することにより勵起されて黃色光を発する高効率蛍光體である.従來の白色LED用黃緑色蛍光體よりも長波長で発光するため,従來の蛍光體単獨では実現できなかった溫かみのある電球色の白色LEDを高い発光効率で実現することが可能である.本報では,サイアロン蛍光體とこれを用いた白色LEDの特性について報告する
コア領域の周りに孔徑が異なる空孔を非対稱に配置した偏波保持型フォトニック結晶ファイバを開発した.試作したファイバは波長1,620nm において,2.1×10-3 の複屈折および?48dBの偏波クロストークを示し,さらに,480nmから1,620nmまでの広い波長領域にわたり,高い複屈折を保持した.また,極めて小さな曲げ徑に対しても,広い波長領域において,ファイバの偏波クロストークはほとんど劣化しなかった.
Fiber To The Home(以降FTTH)における光ファイバケーブルの宅內引き落としや宅內接続においては,メカニカルスプライスやコネクタ接続が主流である.しかし,引き落とし前までの光ファイバケーブルの接続は,融著接続が依然として主流である.FTTH工事には架空を始めとする様々な作業環境があり,また作業現場間の移動も多く,攜行性を重要視する顧客も増えてきている.そこで,裝置の小型化と軽量化を最優先目標とした超小型融著接続機を開発した.
本格的なブロードバンド時代の到來を迎え,FTTH による高速光データ通信が急速に普及している.FTTHを構成する光線路部材にはさらなる経済化や効率化に対するニーズが高まっている.當社では,より効率的な光ファイバ心線の配線?布設?運用を実現するため,少心架空光ケーブルを開発した.このケーブルは,幹線ケーブルの分岐點から數戸の加入者宅までの架空配線および集合住宅などへの引き込みを主な用途とし,従來の架空光ケーブルに比べて大幅な細徑,軽量化を達成し,施工性,経済性に優れていることを特長としている.
毎年,パーソナルコンピュータ(PC)のプロセッサが高性能となり,それに伴って発生する熱量が問題になってきている.2000 年には,PC のプロセッサで使用されるクロック周波數は最大1GHz,発熱量も20W が最大だったが,2004年にはクロック周波數は3GHz以上,発熱量も100Wに迫るほどになっている.発熱量は増加しているが,反対にプロセッサの半導體部分の大きさ自體はほとんど同じか小さくなっており,それゆえ発熱密度は危険なほどに高くなっている.2000年には発熱密度は約10~15W/cm2だったが,2005年には100W/cm2に屆くものと思われる.
この対応策として主に以下の2つが試行されている.
本稿ではPCの限られた空間でヒートパイプやベーパチャンバを用いてプロセッサを冷卻する様々な方法を概説する.
ヒートパイプは2相の熱輸送デバイスであり,優れた熱輸送能力と高い効率性を有している.ヒートパイプは他の冷卻デバイス,冷卻ファン,電子冷卻器,液體循環冷卻器等と比較して,構造が単純,可動部分がない,電力の消費がない,取り付けが容易,メンテナンスフリー等の利點を持つ.しかし,プロセッサの性能アップにより発生熱量が増加するのに伴って,熱抵抗のさらなる低減と最大熱輸送量のさらなる増大が求められることになり,ヒートパイプの性能を改善する必要が生じている.われわれはコンポジットウィック構造のヒートパイプを開発したが,これは従來構造のウイックを持つヒートパイプと比較して,より低い熱抵抗とより大きな熱輸送量を持つものである.
本稿では,パーソナルコンピュータを冷卻するためのコンポジットウィックヒートパイプと従來タイプのヒートパイプの比較を行う.
ビルドアップ多層板においてビアフィルめっきを適用した高密度配線技術を開発した.ビアの充填には電解銅めっき浴に添加剤を作用させてビアを充填する方法を検討した.添加剤管理の適正化とめっきパラメータの調整により,開口徑φ60μmのビアホールに対し90%以上のフィリング率と10μm以下の平坦性を達成できた.適正化された條件を用いてフィルドビアの特徴であるスタック構造による2段ビルドアップ配線を形成し,信頼性の確認を行った.
電子部品が実裝されたフレキシブルプリント配線板(FPC)は,攜帯電話,デジタルカメラ,DVDレコーダなどの電子機器にとって不可欠な部品となっている.しかしながらFPCは非常に薄いフィルム狀であるため,特有の実裝工程が必要となる.
本稿では,最新のはんだによる表面実裝技術や半導體部品を直接FPC上に実裝するCOF実裝技術を詳しく述べると共に,今後の動向について解説する.
當社ではチップ部品やコネクタを実裝したメンブレンスイッチ,並びにメンブレンスイッチにボリュームや筐體などの機構部品を複合させたメンブレンスイッチモジュールを製造している.これらのモジュール製品が使用されているデジタル家電やノートパソコンの小型化が進む中,基板の回路の狹ピッチ化,実裝部の小型化,さらに基板間接続用のコネクタの小型化が要求されている.また製品の攜帯性は市場への普及をさらに加速させており,その結果,使用される環境は多様化してきている.
このように狹ピッチ回路を持つ製品では,結露が発生しやすい環境,たとえば屋外などでの使用にも耐えるよう,回路間のイオンマイグレーションの発生阻止が不可欠な仕様となってきている.
當社はこのような市場要求に対応すべく,導電性インク開発等の材料技術,ファインな印刷やプレス等の生産技術、さらに使用環境條件を再現させる評価技術を開発し,ユーザのさまざまな使用環境下でマイグレーションを抑制する0.5mmピッチコネクタ仕様耐マイグレーションメンブレンスイッチの製品化に成功した.
攜帯電話の普及は目覚しいものがあり,その機能も様々なものが付加されてきている.また,デジタルカメラや攜帯型ゲーム機に代表されるモバイル電子機器も小型化?高機能化がいっそう進んできている.従來からこうした機器には必ずと言っていいほどフレキシブルプリント基板(以下FPC)が採用されていたが,モバイル機器の高性能化に合わせてFPCの搭載率が急上昇し,一部の機器では面積でリジッド基板をしのぐほどとなっている.FPCマーケットにおいて主要サプライヤの一翼を擔うフジクラは,増大する供給責任を果たすとともに,製品の高機能化を図り,市場のニーズに応えてきた.本稿ではフジクラの生産能力拡大と各生産拠點に導入された最新の量産技術について報告する.
PVCやPEと比重分別でき,リサイクル可能なノンハロゲン難燃材料として「エコライト」を開発した.
このエコライトは絶縁性能,難燃性,機械特性,耐候性,色調,押出し加工性等にも優れていると好評を得て,絶縁體やシース材料として汎用電線?ケーブルに使用され,官公庁等のグリーンビルに多數採用されてきた.一方,これまで半導體を製造するクリーンルーム內ではPVC電線?ケーブルが多用されてきたが,可塑剤が蒸発?揮散しアウトガス(周囲環境負荷物質)となり半導體製品不良の一因となっていることが分かってきた.このため,安全で地球環境汚染の少ない電線?ケーブル材料はもちろんのこと,さらに周囲環境に影響を及ぼさない材料が求められている.今回フジクラでは従來の特徴に加え,アウトガス総量を1ppm以下にした「アウトガスフリーエコライト」を開発?商品化した.
次世代パッケージ技術の一つとして期待されるウエハレベルパッケージに,厚膜銅めっきならびに厚膜樹脂形成技術を応用したインダクタを形成し,高周波特性の評価を行った.作製したスパイラルインダクタ,ソレノイドインダクタは高いQ値と自己共振周波數を示すとともに,その値は,シミュレーション値ともよい一致を示した.受動素子內蔵型のウエハレベルパッケージが,RF回路の特性を向上させることが可能であることを確認した.
自動車の電子裝備の増加やモジュール生産方式の導入により,ワイヤハーネスは質量削減,低コスト化および省スペース化が求められている.當社では抵抗溶接を用いたモジュール用接続方法の開発を行い,FPCやFFCといったフラット配線材と抵抗溶接技術をルーフモジュールへ適用することで,上記の課題の解決とともに,ルーフモジュールへの各種機能の統合を達成することができた.