竹永 勝宏
鈴木 龍次
愛川 和彥
姫野 邦治
われわれは高屈折率コアの周りに徑が異なる空孔を2層配置した,新しい構造をもつホーリーファイバを開発した.このファイバは極小な曲げ徑に対しても良好な曲げ損失特性を有するほか,シングルモード動作,および従來のシングルモードファイバと低損失融著接続を実現している.ここでは,ファイバの構成を紹介し,試作したファイバの特性について報告する.
近年,高品質な映像の配信や多チャネルでの映像配信サービスが行われるようになっている.こういったサービスを実施するために,光回線でのアナログ伝送の需要が高まり,それにともなって光回線の多分岐化による損失補償を行うための光増幅器の需要が拡大している.そこで當社では,映像配信向けの光ファイバ増幅器を開発した.本機はマルチスロット型筐體と,EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier:エルビウム添加光ファイバ増幅器)ユニット,電源ユニット,ファンユニット,SNMP(Simple Network Management Protocol:ネットワーク管理のためのプロトコル)ユニットにより構成される.
本機の特長は,第一にアナログ伝送に最適な光學特性であること,第二に高密度実裝によりEDFAユニットを最大9臺搭載可能でありながら外形が19インチラック?高さEIA(Electronic Industries Alliance:米國電子工業會)3Uという省スペース化を達成していること,第三に電源とファンの冗長化構成が可能で,かつ各ユニットが活線挿抜可能でありメンテナンス性が高いこと,第四に安全設計に対応していることである.また小規模システム用として,EDFAユニットを1臺搭載して省スペース化を追求したEIA:1Uの光増幅器も開発した.これらの光増幅器のEDFAユニットや各種オプションユニットの特長について紹介する.
中長距離光伝送路の超多心光ファイバケーブルに加え,近年國內をはじめ海外でも本格化しつつあるFTTxにおける光ファイバの敷設においては,多心,単心の固定V溝型融著接続機を用いることが多い.特にFTTx工事においてはそのトータルコストを削減するために,融著接続機の小型軽量化はもとより,接続作業內容の簡素化と高速化,およびスキルレス化が必須である.
今回これらの要求を実現し12心までの光ファイバを一括接続可能なFSM-50R,4心までの接続が可能なFSM-17R,単心専用機FSM-17Sを開発した.
光アクセスネットワークにおいては,中間後分岐性に優れたSZスロットケーブルが広く適用されているが,近年の光通信需要の増大に伴い,SZスロットケーブルのさらなる多心化が要望されている.現在のSZスロットケーブルは2心テープ心線もしくは4心テープ心線が用いられ,最大心數は300心である.
今回われわれは,8心テープ心線を用いた400心?640心SZスロットケーブルを開発した.試作したケーブルは良好な機械特性および環境特性を示し,地下あるいは架空環境において充分な長期信頼性を有していることを確認した.
近年,光ファイバセンサは,広大な斜面のモニタリングシステム構築の可能性を有するとのことから,道路斜面防災監視技術として注目されている.わが國では,土木研究所を中心に平成11年度末より「光ファイバセンサを活用した道路斜面モニタリングに関する共同研究」が開始され,これにわれわれも參加する機會を得た.
本報では,現場フィールド試験における光ファイバセンサの斜面への設置方法を述べるとともに,今回の測定によって得られたデータを示している.これにより,われわれは光ファイバセンサが道路斜面モニタリングに有効な方法であり,現場據付においても多様な設置方法が可能なことを報告する.
當社ではすでにノートPC向け無線LAN用フィルムアンテナを開発している.このアンテナは大きさが55mm×5mm×0.1mmであったが,今回は面積が約70%小さいアンテナを開発した.従來のフィルムアンテナと同様に2GHz帯および5GHz帯に対応しており,大きさは25mm×2.5mm×0.1mmである.無指向,高利得で可撓性があり,PDA(Personal Digital Assistante)などの小型攜帯機器への搭載に最適である.
近年の電子機器の急速な発展にともない,搭載されている基板に求められる性能も非常に高くなっている.これに対応し,リジッド基板とフレキシブル基板を積層,一體化させたリジッド-フレックス(R-F)基板の需要が伸びている.今回,屈曲特性に優れた中空構造をとり,6層コア基板に1段ビルドアップ層を形成した8層ビルドアップR-F基板を開発した.耐屈曲性,耐熱性,TH信頼性など各種評価の結果はすべて良好であった.高屈曲および高密度配線を両立させた技術は,市場の要求に対して幅広い対応を可能とする.
全層ポリイミドフィルムからなる多層ICパッケージ基板を開発した.ガラスエポキシをコアとする従來のパッケージ基板に比べて大幅に厚さを低減し,多ピンのICやSIPの小型?軽量化に最適な基板となっている.本基板の特徴は導電性ペーストをビアに用いた一括積層法を採用していることである.特にビア形成プロセスには詳細な検討を加えることにより,良好な電気特性と高い信頼性を得ることができた.
ACP(異方性導電ペースト)は異方導電材料の一種で,回路と回路,または回路と部品等の接続に用いられる.この材料の特徴は,機械的接続と同時に電気的接続をとることができることである.また,導通については異方性(接続方向の回路同士が導通し,隣接する回路間は絶縁を保つ)という性質を持っており,これらの特徴により,LCDと周辺回路基板の接続等においてコネクタ接続やACF(異方性導電フィルム)接続からの置き換えが期待されている.
本報では,保存安定性,作業の容易さ等の特徴をもつACPによる接続技術について紹介する.
近年,電子機器の薄型?軽量?小型化が進み,フレキシブルプリント配線板(FPC)の需要が拡大している.とりわけ,FPCに実裝されるICの多ピン?狹ピッチ化に伴い,FPC配線の微細化が求められている.本稿ではFPCの微細配線技術と,この技術を用いた試作について述べる.
FPC(Flexible Printed Circuit)を硬質配線板に接続する際に,従來,コネクタあるいはACF(Anisotropic Conductive Film)が一般的に用いられてきた.それらに代わる接続技術として,FC(Flip Chip)実裝などで用いられているはんだバンプに著目し,バンプによる基板間接続を開発した.この方法では,FPCの端子上にバンプを形成し,リフローで接続する.評価用基板を製作した結果,コネクタの半分程度のエリアで接続することが可能となった. また接続部はR-F基板と同程度の信頼性を有していることが確認された.
當社は自動車用部品に対する環境負荷低減の要求に応えるために,これまでに數種のハロゲンフリー自動車用電線の開発を行ってきている.自動車用ハロゲンフリー電線に求められる性能は多岐にわたるが,中でも自動車安全に深く関わる「耐摩耗性」「難燃性」「限界電流特性」は重要な性能と認識されており,基本性能を満足した上でこれらの性能を現行PVC絶縁電線と比べて劣らないレベルとすることが必要である.
本報では限界電流の代替特性として「加熱変形性」の適用について考察した結果を報告する.
われわれは,當社の標準的な樹脂パッケージの圧力センサ素子とデジタルトリミングASICモジュール回路を用いることによって,小型,低コスト,高性能,高信頼性を有するガソリンタンク內圧センサユニットを開発した.
金屬塩化物を原料とした気相還元法により,平均粒徑が400nmのNi,Ag,Cuナノ粒子の合成を行った.また,次世代の超小型積層セラミックコンデンサをターゲットとした平均粒徑が100nmのNiおよびNi-Wナノ粒子の開発に成功した.Ni-W粒子は,Ni中にWが均一に分布した固溶體であり,100nmのNi粒子に數wt%のWを添加することで,粒子の焼結特性を大きく改善できることが明らかとなった.
IBAD(Ion Beam Assisted Deposition)法とPLD(Pulsed Laser Deposition)法により500m級の高特性YBa2Cu3Ox(YBCO)超電導線材の開発を行っている.IBAD法によりハステロイ金屬テープ基材上に形成したGd2Zr2O7中間層の面內配向性は,100m長にわたり約10°,その上にPLD法により形成したY2O3,CeO2第二中間層の面內配向性はそれぞれ約7°,5°となった.また100m長のハステロイテープ基材上にIBAD法によりGd2Zr2O7中間層を成膜し,その上にPLD法によりY2O3第二中間層を成膜したテープ基材上にYBCO層を成膜した結果,77Kの自己磁場中において100m全長で臨界電流(Ic)38A,臨界電流密度(Jc)0.76MA/cm2を達成した.
色素増感太陽電池(DSC)は,低コストで環境に優しいなどの特徴から次世代太陽電池として期待されている.実用化のためにはいくつかの課題があるが,その一つに耐久性?信頼性向上を目的とした電解質改質があげられる.當社では,ナノ粒子によって不揮発性のイオン性液體を擬固體化したナノコンポジットイオンゲル電解質を用いたDSCの開発を行い,従來のイオンゲル系では達成困難であった高効率化と電解質ゲル化の両立に成功した.
本報では,その太陽電池特性の詳細について述べるとともに,実用デバイスに作り上げる上での要素技術についてもあわせて説明する.
メンブレン配線板は,ポリマ型導電銀ペーストをPETフィルム上にスクリーン印刷し,約150℃で焼成して形成される.このためCu箔を利用したFPCに比べ,製造工程が単純で低コストであるという特徴がある.しかしながら,その回路抵抗がFPCにくらべ著しく高いことなどが原因となり,その用途は広がっていない.この問題を解決すべく,當社では,従來よりも回路抵抗を大幅に低減(8×10-6Ωcm以下)することができる高導電銀ペーストとそれを利用したメンブレン配線板(高導電メンブレン配線板)を開発した.高導電メンブレン配線板の回路抵抗は,従來品に比べ最大約1/10を示す.そのペーストの開発経緯とメカニズムおよび高導電メンブレン配線板の特性を紹介する.
現代の循環型社會においてわれわれは電線材料をリサイクルすることで環境への負荷低減に貢獻することができると考える.そこで溶融再利用が困難な架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル(CVケーブル)絶縁體の代替として非架橋耐熱絶縁材料を開発し,CVケーブルと同等の耐熱特性を持つ非架橋型耐熱ポリエチレン電線を製作した.また,加熱による伸びの劣化試験よりアレニウスプロットを行い,90℃,30年の耐熱壽命特性を満足することを確認した.詳細を以下に報告する.