木村 直樹
奧出 聡
伝送速度が40Gbit/sを超える次世代光通信システムでは,伝送路での波長分散変化を動的に補償するための可変分散補償器が必須となる.これを実現するためにわれわれは分散補償ファイバグレーティングの開発を進めてきた.
今回,製造プロセスの改善により,従來問題となっていた群遅延時間リップルを±3ps以下に抑えることに成功し,40Gbit/s用に適用可能な光學特性を実現した.また,ひずみ分布を用いた獨自の分散量可変機構により,分散量可変範囲±200?1,500ps/nmを実現し,次世代システムに必要とされる可変範囲を確認したので報告する.
水酸基(OH?)による吸収損失を極限まで低減した低OH吸収ピークシングルモード光ファイバを開発した.この光ファイバは,従來のシングルモード光ファイバで使用されるOバンド(1,310nmウィンドウ)またはCバンドおよびLバンド(1,530?1,625nm)に加えて,Eバンド(1,360?1,460nm)の波長帯での使用を可能にする.この光ファイバは急成長するメトロポリタンおよびアクセス系ネットワーク用に適している.
本稿では,當社で開発した低OH吸収ピークシングルモード光ファイバの特性について報告する.
0.85µm帯において10Gb/sの光信號を300m?550m伝送可能なGI(Graded-Index)型マルチモードファイバFutureGuide®-MM10Gを開発した.本ファイバはIEEE802.3aeにおける10GBASE-Sをサポート可能である.本ファイバの帯域仕様は非常に厳しく,また帯域保証のためのDMD(Differential Mode Delay)測定が必要である.われわれは正確な理論モデルに基づいてファイバの設計を行い,新たにDMD測定裝置も開発した.本報では,10Gb/s伝送用GIファイバの評価および設計手法を紹介し,製造したファイバの特性および伝送実験の結果について報告する.
海外における中長距離光伝送路の光ファイバケーブルの接続は,極低接続損失が得られるコア直視型融著接続機を用いた融著接続が依然として主流である.コア直視型融著接続機に要求されるのは,接続損失の低減のみならず,作業現場を選ばない小型軽量化,短時間で大量の接続が行える高速接続性能,非熟練者でも高品質の接続が行える容易な操作性,失敗接続の防止機能である.これらの要求を満足した世界最速/最小/最軽量の新型コア直視型融著接続機FSM-50Sを開発した
Metro系を始めとする公衆回線網の高速大容量化にともない,伝送裝置等の架內,機器內配線の高密度化が進められており,より高密度の実裝を可能とする多心光コネクタの需要が高まりつつある.當社では既に単心光コネクタ並の接続損失を有する4?12心のMPOコネクタを製品化している.今回,さらに高密度実裝が可能な24心MTコネクタの低損失化を実現し,これを利用した低損失24心MPOコネクタ(最大接続損失0.5dB以下)を開発し量産化したので報告する.
送電線はさまざまな環境を通過しており,きわめて厳しい腐食環境におかれている線路もある.従來より電線の腐食対策の一つとして,電線の素線間隙間に防食グリースを充填した防食電線が用いられてきた.當社ではグリースの成分組成を見直し,防食性能を大きく向上させたグリースを開発した.ここでは,このグリースを充填した特殊防食電線の評価試験を行った結果,優れた耐食性が確認できたことを報告する.
われわれは臺灣電力/臺中火力発電所向け345kV CVケーブル3回線を受注し,製造?出荷?現地工事を進めている.われわれの納入する製品の性能検証のため,獨立試験機関である電力中央研究所において型式試験とPQ(Pre-Qualification)長期試験を受検し,無事合格した.これらの試験の概要について報告する.
これまで物理や工學の分野でいろいろ応用されてきたにもかかわらず,電力ケーブルの分野では敬遠されてきた楕円関數(広義には楕円積分も含む)の內,Legerdre-Jacobiの第一種完全楕円積分とJacobi楕円関數を用いた等角寫像の手法とその位相幾何學的側面を活用し,CVケーブル押出し外部半導電層の抵抗率ρを求める新しい測定方法を見出した.これは,ケーブルコアの狀態で非破壊で,かつコアの端部に觸れるのみで測定できる簡便な方法である.
さらに,微分?位相幾何學の観點から考察を加え,この測定法を非回転対稱體に拡張し,扇形CVケーブル半導電層の新しいρ測定法を提案した.なお,本文のρの導出過程は,二次元として扱えるいろいろな分野,たとえば,電流界,靜電界,熱伝導,流體力學の計算に活用できる.特に,最近注目されてきた薄膜工學の分野への応用も期待されよう.
期待壽命を迎えた設備をさらに限界まで使うことが指向されている今日,ケーブルについても同様な要求があり,その支えとなる絶縁診斷技術の高度化?普遍化が強く望まれている.そこで,最終的にはあらゆる劣化,欠陥,異常に直結する部分放電を検出する裝置の開発に取り組んだ結果,高感度検出,価格,簡便性において當初の目標をほぼ達成する裝置を開発することができた.特に5pC以下の高感度を有していることで実線路での使用のみならず,製品の出荷検査,研究開発等の用途にも活用できるものと期待される.
本報では,検出原理を中心に開発裝置の概要を紹介する.
パソコンやワークステーション,サーバ等に搭載されているMPU(microprocessor unit)の高効率冷卻を目的に,新型熱拡散板として開発された“ベーパチャンバ(平板型ヒートパイプ)”について,その內部で生じている熱流動現象を解析し,現象解析に基づいた設計資料を提出するため,數値シミュレーションコードを開発した.本コードを用いることにより,任意の設計條件におけるベーパチャンバ內の熱流動特性を明らかにすることができた.また,実験結果との比較によって,本コードによるシミュレーション結果の妥當性を確認した.
IBTA(InfiniBand Trade Association)が策定した,次世代のインタフェース規格であるInfiniBandに準拠し,高速でデータを送受信することが可能な溶接型コネクタと接続技術を開発した.伝送速度2.5Gbps(1.25GHz)のもとでインピーダンスの整合性,近端漏話特性が非常に優れている.將來的には伝送速度10Gbpsにも対応可能なコネクタとして期待できる.
ファイン回路パターンを有するビルドアッププリント配線板の開発をアディティブ法で行った.アディティブ法はサブトラクティブ法よりもファインパターンの形成には有効な手法であった.このような技術は,今後ますます加速する電子機器の高機能化,高密度化に対応した実裝回路を提供する多層プリント配線板への応用が期待できる.
透明導電膜のITO(スズドープ酸化インジウム)は室溫では高い透明性や導電性を有するが,耐熱特性に劣るため300℃を超える溫度での使用は不可能であった.色素増感型太陽電池(DSC)は,その製造工程において透明電極に400℃以上の熱処理を施すため,導電性の高いITO膜を窓側透明電極として採用することができなかった.われわれはITOを耐熱性,耐薬品性に優れたFTO(フッ素ドープ酸化スズ)と複合化することにより,耐熱性と導電性を両立するFTO/ITO膜を,スプレー熱分解法を用いて開発した.FTO/ITO膜は優れた耐熱特性を有しており,これを窓用電極材として組み込んだDSCは変換効率を大きく向上できることが判明した.本報告では開発した複合膜の基本特性と,DSCに組み込んだときの変換効率への効果について記す.
自動車業界では部品類を統合するモジュール生産方式の導入が増加しており,われわれはモジュールに対応する新しい配線システムを開発した.本ワイヤハーネスに使用されるコネクタは,ホットメルトを利用した圧接防水タイプである.今回,極性の低いゼロハロゲン電線被覆材料と極性の高いハウジング材料の両方によく接著するホットメルト材料を開発し,エンジンルームの使用環境に耐えうる信頼性の高い圧接防水コネクタを開発したので報告する.