福田 武司
石川 紫文
石井 裕
佐久間 健
細谷 英行
フェムト秒レーザの集光照射によって誘起される透明材料內部の局所的な屈折率変化を利用した光デバイス開発が注目を集めている.この技術を用いて作製した長周期ファイバグレーティングは優れた熱安定性を持つことから,高溫領域でも動作可能な溫度センサなどとしての応用が期待できる.今回われわれは,フェムト秒レーザの集光點付近で発生する白色光を指標とすることで,光ファイバのコア中心部に精度よく屈折率上昇領域を誘起した.その結果,優れた損失スペクトル形狀を有し,過剰損失の小さい長周期ファイバグレーティングを再現性よく実現したので報告する.
FTTH(Fiber To The Home)の進展にともない,より小さな曲げ徑で敷設や余長収納可能な光ファイバが求められている.しかしながら,従來のSMF(Single-Mode Fiber)の構造で曲げ損失を低減可能な設計を採ると,大幅に接続損失が増加してしまう.われわれは,新たにトレンチ型屈折率分布を採用することで,曲げ損失を低減しつつ接続損失を抑制可能な光ファイバを開発した.試作したファイバのうち許容曲げ半徑7.5mmに設計したファイバの1,310nmにおけるSMFとの接続損失は0.32dBであり,従來の低曲げ損失ファイバの約半分の接続損失を実現した.
FTTH(Fiber To The Home)を経済的に実現する技術の一つとして,われわれは低価格な小型単心メカニカルスプライスを開発した.本メカニカルスプライスは精密熱可塑性樹脂を使用したインジェクション成形技術により生産され,平均接続損失は0.03dBを達成している.また,一連の機械特性,耐環境特性など長期信頼性試験でも良好な結果を得ている.FTTHで必須の架空クロージャでの作業を考慮し,本メカニカルスプライスの組立工具は小型?軽量(165g)とした.また続いて,メカニカルスプライスの技術を応用し,現場で短時間で組み立てることが可能な光コネクタとその組立工具を開発した.新型コネクタ(くさび付コネクタ)の検討結果とあわせて報告する.
コンピュータのデータの保存としてHDD等の記憶裝置が一般に使用され,これらは従來パラレルバスを用いてデータのやりとりがなされている.今日個人があつかう情報量は飛躍的に増大しており,PCでも60GB,80GBの容量をもつ機種も珍しくない.PCとHDD間のデータ転送方式はアメリカ規格協會(ANSI)によってATA(At Attachment)規格として標準化されてきたが,従來のパラレル伝送方式をシリアル伝送方式として高速化したシリアルATA規格が2001年に標準化された.
今回當社ではシリアルATA規格に基づくケーブルを開発し,第一電子工業株式會社のコネクタと接続加工して評価を行った.インピーダンス変動やスキューが小さい等満足できる結果が得られた.
當社では,メンブレンスイッチ,およびメンブレンスイッチと機構部品とを複合化したメンブレンスイッチモジュールを製造,販売している.これらの製品はデジタルカメラやデジタルビデオカメラなどに使用されており,UL認定を要求される場合が多い.UL規格の燃焼試験に合格するため,これまでは軟質塩化ビニル系樹脂を回路にオーバーコートすることによりメンブレンスイッチを難燃化してきた.しかし近年環境負荷低減の要求が強く,不完全燃焼時にダイオキシンを発生する塩化ビニルおよびその他のハロゲン系化合物の使用規制は増加する傾向にある.本報では,ハロゲン系化合物を使わずに難燃化を実現し,従來の塩化ビニル系樹脂コーティングと同等の機械的特性,電気的特性を維持したエコ難燃メンブレンスイッチの開発に成功したので報告する.
環境負荷を低減した製品に対する需要の高まりを受け,ハロゲンフリーリジッド-フレックス多層基板(R-F基板)の開発に著手した.開発を進めていくと,R-F基板はフレキシブルプリント配線板(FPC)より高い耐マイグレーション性が要求されることがわかった.このため各種性能評価のうえ,材料選定,加工條件の最適化を行い,現行量産品レベルまで諸特性を改善する見通しを得た.
フリップチップ実裝によって配線板の小型化や高密度化が達成されたが,半導體の高機能化や高集積化は依然急速に進んでおり,狹ピッチ接続対応という點で,従來のフリップチップ工法では限界が近づいてきている.
當社では,より狹ピッチの実裝が可能なフリップチップ工法として超音波フリップチップ工法に著目し,FPC上への実裝検討ならびに評価試験を行った.その結果,FPCへの超音波フリップチップは,接続性?信頼性ともに十分であることを確認した.また,狹ピッチ適応のみだけでなく工法タクト短縮により従來工法よりも生産性の向上も期待できる.
HDD(Hard Disk Drive)裝置におけるサスペンション上への微細回路形成はすでに普遍化している.サスペンション上への回路形成には種々の工法が用いられているが,FPC法と呼ばれるサスペンションにフレキシブル基板を貼り合わせる回路一體型サスペンションは,他の工法と比較して低コストや転送特性の點で優位である.われわれは,今後急増が予測されているAV(Audio Visual)機器搭載HDD用として,中継基板が一體化されたサスペンション用FPCを開発した.本開発のFPCの加工には,HDD用FPCとして最適化した濕式エッチング技術を採用し,100µm以下の解像度を得るとともにダストフリー化を可能とした.
次世代のパッケージ技術として,シリコン基板に貫通配線を形成する技術が注目されている.當社では,イメージセンサやマイクロミラー等のMicro Optical Electro-Mechanical System(MOEMS)への応用を目的として,高密度貫通配線を有するシリコン基板の試作と,基本的な特性の評価を行った.さらに,有限要素法を用いて貫通配線の構造解析を行った結果,充填金屬とシリコン基板との間にはクラックの原因となるような高い応力は発生しないことが判明した.
近年,自動車のエレクトロニクス化にともない,電裝機器などが増加するためワイヤハーネス(以下,ハーネス)はますます肥大化する傾向にある.一方,自動車の燃費向上のため軽量化対策が実施されており,ハーネスの質量削減も大きな課題となっている.當社の顧客において2003年4月に発売された新機種の自動車では,ハーネス軽量化の一つの手段として,従來室內にあるエンジンコントロールユニット(以下,ECU)をエンジンルーム(以下,E/R)內に配置させている.それにより,今までECUに接続するため室內へ伸ばしていたハーネスがE/R內だけで対応できるため,ハーネスを削減させることが可能となった.
しかし,ECUをE/R內に配置させるためには,従來室內環境仕様のECUをE/R內環境仕様にしなくてはならず,ECUのコストアップになってしまう.そこで,今回當社が開発した冷卻機能と防水機能を有するボックスによって,E/R內に室內環境仕様のECUを配置させることを実現できたので報告する.