大橋 正和
田中 大一郎
偏波面保持型の光部品は,偏波インタリーブ多重伝送など,次世代のDWDM伝送技術をになう伝送システム部品として注目を集めている.われわれもこれまでに溶融延伸型の偏波ビームコンバイナ(Polarization Beam Combiner : PBC),偏波保持タップ(Polarization Maintaining Tap : PM-Tap)カプラを開発し,実用化している.しかし従來のPBC,PM-Tapカプラでは,挿入損失の波長依存性,溫度依存性が十分に抑制されていないという問題があった.
今回,溶融延伸型光部品用に最適化したPANDAファイバを使用することにより,挿入損失の溫度依存性,波長依存性を大幅に改善したPBC,PM-Tapカプラの開発に成功した.PBCについては波長範囲40nmにおいて0.4dB以下の挿入損失を達成しており,またPM-Tapカプラについても40nmの波長範囲で0.1dB以下の波長依存性,0.15dB以下の溫度依存性を達成している.
マイクロレンズを用いたビーム伝播型光部品では,光機能素子を変更するだけで様々な光部品を構成できるという利點がある反面,小型化?低価格化が困難であると言われてきた.この種の光部品の大きさを制限しているのは,マイクロレンズであることから,われわれは石英系ファイバの製造方法であるPCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法を用いることで,従來品との體積比約1/60で石英ロッドレンズを作製することに成功した.
また,レンズと光ファイバの直接融著技術を開発することにより,ビーム伝播型光部品の大幅な小型化?低価格化のみでなく,光學特性?信頼性においても優れた特性を有していることを確認した.
FTTHに向けたネットワークの構築には,経済的?効率的な光配線が必要である.われわれは,中~小規模エリアをターゲットとした,防水性を有するスロットレス構造の少心アクセス光ケーブル(LTケーブル)を開発した.ケーブルのコンセプトは,(1)種々のネットワークシステムに対応可能な心數系列を有していること,(2)ケーブル布設や中間後分岐作業が容易であること,(3)架空?地下のアクセス系や構內縦系の領域をカバーできることである.ここでは,LTケーブルの特徴,構造,特性について紹介する.
地中送電系統のCV化にともない,既設OFケーブル線路へのπ引き込みなどに,CV/OF兼用のY分岐接続部(以下YJ)の適用が多くなると考えられる.しかし,従來型のYJでは,その大きさ,質量からYJ用としての専用設置スペースを必要とするため,既設マンホール內へ設置する場合には接続作業,ケーブルオフセット長などを考慮したコンパクト化が必要である.そこで,既設マンホール內スペースで接続?設置が可能なCV/OF兼用の154kV用異種YJ(長さ1,560mm,高さ585mm,幅305mm)を開発した.
當社では,電線やケーブルへの適用を目的として,様々な熱可塑性エンジニアリングプラスチックの基礎的な調査?研究を行ってきた.そのなかでもPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)は,耐熱性,電気的特性および機械的特性にすぐれており,特殊仕様ケーブルの絶縁材料として製造を行っている.また,PEEKの優れた特性を引き出すために,ある一定の結晶化度で製造する方法をすでに確立している.
近年,PEEKを高溫下(約300℃)で配線される電線などの絶縁材料として使用する要求があり,高溫下での性能評価を実施した.本報ではPEEK電線のすぐれた特性を報告する.
サーバやストレージ間データ伝送に対応する次世代ネットワーク規格であるインフィニバンドに適合するケーブルアセンブリを開発した.各種の電気的,機械的試験を実施した結果,十分に規格を満足することを確認した.特に近端漏話は2%以下と非常に低い値を得た.
2GHz帯と5GHz帯の周波數帯を併用した無線LANが今後普及すると見込まれ,これに対応したノート型パソコンなどのモバイル機器への內蔵に適したマルチバンド対応フィルムアンテナを開発した.アンテナは55mm×5mm×0.1mmと小型であり,かつ2GHz帯と5GHz帯の2つの周波數帯で使用することができる.
指向性は両周波數帯で無指向性を実現しており,利得の全方位の平均も2GHz帯で1.7dBi,5GHz帯で2.3dBiと非常に高く,機器內に搭載した狀態で安定した送受信が可能である.
當社では,押し圧によって接點抵抗が変化する感圧接點がシート內に多數配置されていて,荷重,圧力の分布が検知できるシート狀感圧センサを開発している.例えば,自動車のエアバック制御用として乗員の體格や姿勢を検知可能なセンサの開発に成功している.また,楽器,ゲーム,家電,パソコン用として用いられる入力デバイスへの展開を狙い,感圧特性(抵抗-圧力特性または抵抗-荷重特性)を制御する検討を行っている.
本報では,様々な用途に応じた感圧センサ,さらに感圧センサに機構部品を複合化した感圧センサモジュールの開発に成功したので報告する.
色素増感太陽電池の研究開発は,低コスト,簡便な製造工程,低環境負荷といった多くの魅力的な特徴から,世界的規模で活発に進められている.大量普及時代をになう次世代太陽電池として注目を集めているが,実用化のためには,セルの耐久性向上,大型パネル化などいくつかの課題を克服する必要がある.
本報では,色素増感太陽電池の実用性向上を目的とし,イオン性液體を用いた新たな電解質の開発,評価を行うとともに,導電率,透明性を改善した集電配線付き窓極用ガラス基板を用いて良好な発電特性を有する100mm角テストセルの試作を試みたので報告する.
近年の移動體通信端末機器の高性能化にともない,押しボタンスイッチとして用いられるメタルドームシートも高品質かつ小型化,高性能化が求められている.當社では同スイッチシートの量産を1997年から開始し,以後,生産技術開発,高性能化開発に取り組んでいる.今回,有限要素法解析を用いた形狀設計と材料の最適化技術を確立し,同スイッチシートの機構部品であるメタルドームについて,これまで実現が困難であった小型化かつ高耐久化を同時に達成したので紹介する.
化學気相蒸著(CVD)法を用いて酸化物超電導線材の高速?長尺合成を実現するために,CVD原料を連続的に供給可能な気化システムと,Y1Ba2Cu3Ox(YBCO)膜の多段積層合成が可能な6段リアクタを裝備した6段CVD裝置を開発した.CVD原料の濃度と供給速度について條件の最適化をはかることで,無配向圧延Agテープ基材上に10m/hの速度で高品質なYBCO膜を合成することに成功した.また,この條件で12h連続CVD運転を行うことにより,全長にわたり6.1×108A/m2(77K,0T)の臨界電流密度(Jc)を有する100m級YBCOテープ線材の開発に成功した.