中村 卓広
西脇 賢治
百津 仁博
淺野 健一郎
細谷 英行
近年の急速な通信容量の高速?大容量化に対応するため,偏波保持技術を応用した波長多重伝送方式の検討が進められている.このようなシステムに適用される光増幅器,光合分波器等の機器において使用される光部品は,信號光の偏波狀態を保持する機能が重要となる.
今回當社は,高い偏波保持性が広範な溫度範囲において安定して得られる,偏波保持WDMを開発したので以下に報告する.
高密度波長多重伝送システムでは,エルビウム添加光ファイバ増幅器(Erbium-doped Fiber Amplifier,以下EDFAと略す.)の利得平坦度が重要である.EDFAの利得は利得等化器を用いて平坦化されるが,EDFAの動作狀態が変化するとEDFの利得傾斜により利得平坦度が劣化する.この利得平擔度の劣化をツ リウム添加光ファイバを用いて補償した.このEDFAは信號波長帯域1,539nm~1,564nm,入力ダイナミックレンジ8dBにおいて利得平坦度0.5dB以下,雑音指數6.0dB以下である.
ユーザ系光ケーブル被覆材料には,加工性に優れ,廉価であるポリ塩化ビニル(PVC)が一般的に使用されている.PVCは,焼卻時にダイオキシンのような有害ガスを発生させる可能性と,埋立処分時に鉛化合物溶出などの環境への悪影響が懸念されている.近年,地球環境保護の観點より,有害物質を含まず,地球環境に配慮した材料の使用要求が高まっている.今回ユーザ系光ケーブルで被覆材のノンハロゲン難燃化の開発を行った.その內容について報告する.
従來,企業ネットワークのLAN間接続には,ディジタル専用回線が使われることが多かった.しかし,ATM(Asynchronous Transfer Mode)サービスの多様化,低価格化にともない,LAN間接続にATM回線を適用する需要が高まってきた.ATMサービスは,その特長から,価格面のみならず,性能面においてもLAN間接続に適しているサービスであると言える.當社は,安価にATM接続を実現するためのATMアクセスルータFNX0550を開発した.FNX0550は,大規模企業ネットワークの構築に対応する機能を搭載したうえで,低価格を実現した製品である.
光ファイバを用いた干渉型センサは,様々な物理量を測定する手段として広く用いられている.當社はこれまでに光ファイバリング干渉計を用い,無切斷通話裝置1),光ケーブル対照器2)などを開発してきたが,さらにこの技術を応用した定量的な測定が可能な振動検知センサの検討を行っている3).しかし,定量測定が可能なセンサとして使用するためには,感度の安定性や直線性を改善する必要がある.そこで,光ファイバリング干渉計の原理と問題點を確認し,その解決方法についての検討?評価を行ったので,その內容を報告する.
世界初の低減絶縁500kV 2,500mm2アルミ被CVケーブル地中送電線路である東京電力新豊洲線の建設がこのほど完成した.
當社では線路亙長約40km 2回線のうち,ケーブル約20km 1回線分と付屬品を納入し,特に1,800mにおよぶケーブルの長尺化によって中間接続數の削減と工期の短縮に寄與した.また,本プロジェクトでは品質管理,布設工法および中間接続に多くの最新技術を適用して線路の信頼性の向上に努めてきた.以下に本プロジェクトの概要を示す.
直流XLPEケーブルは,長距離大容量送電の擔い手として將來期待されており,當社では500kV級直流ーブルの開発を進めている.この絶縁體としては,絶縁抵抗が高く,空間電荷の蓄積を抑制する効果がある無機充填材入りXLPEを用いている.
これまでに500kV級直流ケーブルおよび同徑接続部について設計試作し,各種電気試験を行った結果,初期特性として十分な電気特性を有することを確認している.そして,開発の最終段階として長期課通電試験を実施したので,これらの結果について報告する.
近年のデータ伝送容量の急激な増大にともない,OPGWにおいてもDWDM伝送方式が適用され始めている.実効コア斷面積拡大型NZ-DSFとSMFを複合した金屬管ルース型OPGWを試作し,敷設環境における張力変化?溫度変化?振動などの各種條件を想定した一般性能試験を行った.その結果NZ-DSFはSMFと同等の良好な伝送特性を有しており,実用に供し得ることを確認した.
建設工事現場における仮設電源用ケーブルにキャブタイヤケーブル(以下CTケーブルと略す)が多く使用されている.ころがし配線など亂暴に取扱われるために,その被覆材としては耐衝撃性,耐摩耗性等に優れるゴム系材料が主として使用されており,一部に廉価である塩化ビニル(以下PVCと略す)が使用されている.本報では,両者の利點を兼ね備えた新しい材料を開発し,ケーブルとして評価を行った結果について報告する.
當社では,攜帯電話および腕時計用のページャとして搭載するための極小直流振動モータを開発してきた.省電力かつ高振動の要求に対し,以前開発した2コイル式振動モータよりも特性が優れたモータを開発することができた.これは,2コイル式振動モータを基本構造とした,3コイル式振動モータとして新たに開発したものである.現在市場にでているモータは,ペンシルタイプとコインタイプとがある.このモータは,従來品と同様にコインタイプのもので,外徑がφ8mmとこのタイプとしては世界で最も小さくて軽量な振動モータである.
電線?ケーブルの被覆材料としては電気特性,機械特性,加工性等の特性が優れ,またコストも廉価であるためポリ塩化ビニル(以下PVCと略す)が使用されることが多い.しかし,PVCは不適切な條件で燃焼した場合のダイオキシン発生や,埋め立て処分した場合の鉛化合物の溶出による環境汚染が懸念されている.このため,電線分野においても,より安全で環境に配慮した材料が求められ,様々な品種の電線において環境対策や材料の研究開発が進められている.本報では,家電?電子機器分野におけるエコ多心ケーブルについての開発狀況および今後の課題について報告する.
自動車のスマートエアバッグシステムでは,乗員の體格に応じたエアバッグの展開制御システムが求められている.われわれは,乗員の體格を検知する手段として,シート內に多接點の感圧式メンブレンセンサを配置し,各接點の圧力情報から乗員の體格を検知する體格検知式著座センサの開発を進めてきた.本報では,本センサの実用化に向けて大きな開発課題であったセンサシート面內の感度ばらつきの低減,ならびにセンサ感度の溫度依存性の改善についての詳細を報告する.
われわれは15m長の2.6kA級新型超電導ケーブル導體を開発した.本導體は中心フォーマであるフレキシブルSUS管の周囲に複數本の転位セグメントを巻き付けた構造を有している.転位セグメントは5本撚り構造であり,絶縁処理を施した強化銀シーステープ線を採用して,線材の強度を確保するとともに低交流損失化をはかった.導體は3層構造を有しており,各層のインピーダンスが等しくなるよう巻き付けピッチが層ごとに調整されている.通電試験の結果,同一セグメント內のテープ線に流れ込む電流は,±5%以內に均流化されていることを確認した.また,3層の各層に流入する電流を通電電流200~2,800Aの範囲で±6% 以下に均流化させることができた.これらの電流均流化を達成することにより,1,000Aの交流電流通電時において0.1W/mの交流損失であるという低交流損失型高溫超電導ケーブルの開発に成功した.
近年,複雑化しているエコ材料や電子材料の成分分析に迅速に対応するため,加圧分解容器を用いた試料の前処理法を確立した.この手法は,迅速?低コンタミネーションであるため,微量元素分析の前処理に非常に適している.本報では,加圧分解容器を用いた試料の分解および実際の微量分析への応用について紹介する.
自動車用ワイヤハーネス(以下WH)の仕様図は,従來フリースケールの2次元(以下2D)図面で提供されていたが,自動車業界のデジタルプロセス化により,製品?部品仕様は3次元(以下3D)CADデータでの一元管理となり,WHの仕様も実寸スケールの3DCADデータで提供されることが必定となっている.
しかしWHは製作段階において平面図板上で組み立てられるため,従來と同じ2Dの製作図面が必要である.
今回,顧客の3DCADデータを2D展開して社內のWH専用CADへの変換データを作成するシステムを,3DCADベースに開発した.
自動車の電気負荷は年々増加しており,より効率を高めるため,車両電圧を14Vから42Vへ昇圧する動きがある.42Vシステムにおいて,ワイヤハーネスは重要な部品となるが,多くの技術的課題がある.特に通電中にコネクタを外したときに発生するアーク放電は深刻な問題で,実験では端子が5mm程度溶け,端子の溫度が1,000℃以上に達することがわかった.
この問題を解決するため,42Vシステムに対応した新タイプのコネクタを開発した.このコネクタは,端子間で発生するアークエネルギーを本質的に低減することができる.
タッチモードと稱される新しい方式の靜電容量型圧力センサは,様々な分野で応用される可能性を秘めている.高度な微細加工が必要なこのタイプのセンサには,先進のMicro Electro-Mechanical System(MEMS)技術が適用されている.タッチモード構造の場合,センサに外部圧力が印加されると,そのダイアフラムは対向電極側の基板に接觸して保護される.このことから,タッチモード方式のセンサは従來方式に比較して,その出力特性の直線性に優れ,定格測定範囲を大きく超える印加圧力にも耐えられ,さらには過酷な環境下の工業用途にも使用可能な頑健な構造を有している,という特徴がある.當社は工業的規模での生産が可能で,かつタッチモード構造を有する靜電容量型圧力センサの開発に成功した.
當社はチップ上で信號調整された,高出力で,溫度特性補償,調整機能を持った低電圧駆動集積化圧力センサを開発した.このセンサチップはピエゾ抵抗ゲージを持つダイヤフラムとバイポーラリニアIC,レーザトリマされた薄膜抵抗で構成され,同一のシリコンチップ上にすべて集積化されて搭載されている.この圧力センサは直流3Vの定電圧で駆動可能であり,バッテリ駆動攜帯製品に適している.