バックナンバー Fujikura Technical Review
Fiber To The Home(FTTH)サービスの世界的な普及にともない,光ファイバの取り扱い性と収納性の観點からより小さく曲げても伝送損失が増加しない光ファイバが求められている.そこで當社では,國際標準機関(ITU-T)の勧告 G.657.B3 および G.652.D に準拠し,曲げ半徑 5 mm での曲げ損失を低減した光ファイバを開発した.開発した光ファイバは,従來のシングルモード光ファイバとの接続特性に優れ,宅內や局內をはじめとする FTTH システムにおける使用に適していることを確認した.
近年,天文や醫療,ディスプレイの分野において高出力黃色光源への期待が高まっている.波長 1160 nm から1200 nm の近赤外光を波長変換する方法が有力視されているが,そのための実用的な高出力種光源が存在していない.そこで今回當社では偏波保持フォトニックバンドギャップファイバを用いて波長 1180 nm において 10 W を超える出力を持つファイバレーザの開発を目指し,その実現に成功した.出力は最大で 10.8 W,変換効率は50 %,スロープ効率は 56 % であった.出力光は直線偏波で回折限界に近いことから波長変換に最適である.
光ファイバ技術の応用分野は情報通信だけでなく非通信分野にも展開され,伝送媒體である光ファイバの種類も増えている.昨年,特殊光ファイバの高品質な融著接続性能を実現した特殊光ファイバ融著接続機(型番:FSM-100M / FSM-100P)を開発したが,今回はさらに機能を追加し,直徑 1200 μm までの大口徑光ファイバの接続機能や,光ファイバを端面方向から観察しマルチコア光ファイバのような特殊光ファイバを調心する機能を備えた高機能特殊光ファイバ融著接続機を開発した.
光アクセスネットワークおよび光インターコネクションの分野で多心光コネクタの要求が高まっている.市場の要求は低価格および低損失であるため,當社では安価で製造可能な熱可塑性樹脂PPS(ポリフェニレンサルファイド)を用い,アセンブル時の研磨工數も削減することができるシングルモード光ファイバ用低損失プレアングルドMTフェルールを開発した.このMTフェルールを使用した多心光コネクタ(MPOコネクタ)は,光アクセスネットワークおよび光インターコネクションで使用する際に要求される環境特性を満足するとともに,最大接続損失 0.25 dB 以下を実現した.
多値位相変調方式を用いた40Gbit/s長距離光インタフェースモジュールを開発した.従來の振幅変調方式では,要求される光雑音耐力,分散耐力,光占有帯域幅などの特性確保が困難であるため,新たにRZ-DQPSK方式を採用し,それらの特性の改善をはかった.また,オプションで半導體光増幅器(SOA)を內蔵でき,光出力信號を所望の強度まで増幅する機能も備えた.本製品は,業界標準である300pinMSAに準拠し,43.02,44.57 Gbit/s のデュアルレートで動作する.
フレキシブルプリント基板の高密度化に伴い,銅めっき工程には良好な均一電著性,優れた皮膜物性が要求される.現在,FPCのスルーホール銅めっきには可溶性の陽極が使用されているが,可溶性であるために陽極面が変化してしまい,均一なめっき皮膜を得ることが困難である.また長期間の連続電解処理を行うとスラッジが堆積し,めっき膜厚にバラツキが生じてしまうことも報告されている.そこで本報では,めっき皮膜の均一性が良く,作業性,メンテナンス性を含めた低コスト化が期待でき,高い生産性を有する不溶性陽極を使用することの実用性について検討した.
サージ受信型の電力ケーブル故障點標定裝置は,故障點の早期発見?復舊に資するため,主に超高圧系線路に導入がはかられている.本裝置は,電力ケーブル地絡故障発生時のサージ電流の線路両端への到達時間差をGPS同期信號を利用して特定するものである.サージ電流検出には電磁誘導型センサが適用されており,変電所等の強電磁ノイズ環境下での使用については信頼性の面で課題があった.そこで、ファラデー効果を利用した光ファイバ電流センサを故障點標定裝置に適用したところ,良好な結果が得られたので報告する.
現在,レーザー加工機に使用される波長 1 μm 帯において,光アイソレータ用ファラデー回転子にはTb3Ga5O12(TGG)単結晶が使用されている.しかし,ファラデー回転角不足,結晶育成が比較的困難,さらに非常に高価などの問題點も指摘されており,それらの問題を解決すべく,Tb3(Sc,Lu)2 Al3O12(TSLAG)単結晶に注目し結晶の育成?評価を行った.本論文では,TSLAGは結晶育成が容易であり,透過率,ファラデー回転角,消光比といった光アイソレータ用ファラデー回転子として重要な特性が全てTGGと同等以上であることが確認された.
色素増感太陽電池はこれまでの太陽電池と比べて,低コストで環境に優しいといった特徴から次世代型太陽電池として期待されている.當社ではこれまでその実用化を目指し,開発した高耐久性DSCモジュールを屋外で実際に動作させたときの長期耐久性や発電量の測定を行ってきた.その結果,DSCはJIS規格に定められる標準條件で測定した発電効率よりも屋外設置環境での実発電効率の方が高く,同じ出力のモジュールを比較した場合には,従來のシリコン太陽電池よりも年間総発電量が大きくなることがわかった.
ミリ波帯を利用した數Gbpsを越える高速大容量無線通信が可能になりつつある今日,ミリ波帯で動作する無線通信機器向けの低損失配線板が重要性を増している.當社では,ミリ波配線板に搭載するための受動素子として,シリコン上銅配線技術によりミリ波伝送線路とバンドパスフィルタを設計?試作した結果,それぞれ減衰定數 0.2 dB/mm という低損失と,1 dB 帯域幅 7.0 %, 挿入損失 4.67 dB という高性能を実現した.
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