齊 藤 晉 聖
光ファイバ1本あたりの伝送容量をさらに拡大するための技術として,マルチコアファイバが注目されている.マルチコアファイバの伝送容量をより高めるためには,高密度のコア配置とともに,低いコア間クロストークが要求される.本稿では,高密度かつ低クロストークな構造のマルチコアファイバとして,トレンチ型マルチコアファイバを提案するとともに,実際に設計?試作したトレンチ型マルチコアファイバの検証結果を報告する.従來の単峰型構造と比較し,20 dB以上のクロストークの低減や,斷面積で20%以上の高密度配置を実現した.
酸化亜鉛(ZnO)は紫外線発光デバイスを実現するための有望な材料である.われわれは,紫外線発光デバイス実現を目指して,ZnOおよび酸化マグネシウム亜鉛(ZnMgO)の結晶成長を行った.その結果,ZnMgOにおいて5.0 × 1015 cm-3まで殘留電子濃度を低減し,また,成長溫度の最適化により窒素(N)ドーピング時の自己補償効果を抑制した.さらに,ZnO基板とNドープZnMgOのシングルへテロ構造において,電流注入によるバンド端近傍からの発光を観測した.
光ファイバを構成部品として製作される光ファイバ増幅器機等の各種光ファイバ応用製品においては,光ファイバの安定した前処理作業が品質の維持に重要である.特に光ファイバを融著接続する前には,(1)クラッド表面に著しい傷を付けることなく被覆を除去,(2)クラッド表面をアルコール等の溶剤で清掃,(3)光ファイバを高精度に切斷,が必要である.前処理作業の品質は,作業者の熟練度や工具の狀態に依存する複雑な作業であり,品質の安定性を損なう要因となっていた.これらの市場要求に対し,作業者の熟練度に依存しない安定品質を実現した非加熱方式の全自動光ファイバ前処理機を開発した.
光ネットワークの構築に必要不可欠な部材である光コネクタは,光コネクタ接続端面に汚れや異物が付著した狀態で接続したときに,光接続特性が悪化する場合があることが知られている.光コネクタの特性を最大限に引き出し,低損失な光接続を実現するため,光コネクタ接続前の光コネクタ端面を清掃することを作業標準とすることが認知されてきている.しかし,従來の光コネクタ清掃工具は,作業者に依存する場合があるため,作業者に依存しないよう,清掃工具の機能向上が求められている.このような課題に対し,われわれは作業者依存がなく,簡単な作業で確実に汚れや異物を除去することができる光コネクタ清掃工具を開発したので報告する.
フレキシブル導光フィルムはドームスイッチシートと一體化して攜帯電話に搭載され,各キー間,キー內での均一な照光とキースイッチのクリック感の伝達を実現している.當社では,導光フィルムの均一照光技術や分割照光?迷光遮斷技術を開発し,その高機能化を実現した.本報では,攜帯電話用フレキシブル導光フィルムの當社最新技術とその応用展開について紹介する.
近年,都市の高度化が進み,高齢社會を背景にバリアフリー化が必須となっている現代社會において,エレベータは縦の交通手段として日常生活や社會活動に不可欠なライフラインとなっている.また最近のビル建築は,インテリジェント化とともに高層化?大型化が進んでおり,エレベータも高行程?高速化している.その制御を伝達する超高層用エレベータケーブルの最近の技術的動向を紹介する.
イットリウム系超電導線は単位斷面積當たりの臨界電流密度が非常に高く,安価な液體窒素中でも高い超電導特性を示すため様々な超電導機器への応用が期待されている.當社では1991年に當社獨自のIBAD法の開発に成功して以來,精力的にイットリウム系超電導線の開発を行ってきた.今回,臨界電流(Ic)572 A,長さ(L)816.4 mの超電導線の作製に成功し,臨界電流(Ic)と長さ(L)の積であるIc?L値が466,981 Amとなり世界記録を更新した.また,線材の長尺化に伴い応用化に向けた取り組みについて概要を報告する.
色素増感太陽電池はこれまでの太陽電池と比べて,低コストで環境に優しいといった特徴から次世代型太陽電池として期待されている.この太陽電池は拡散光下や低照度環境で高い発電効率が得られる性質を持っており,室內でも効率よく発電することが出來るため,周囲の環境エネルギーから得た電力で動作する環境発電デバイスの用途に適している.今回フジクラでは獨自の材料技術により,低照度環境でさらに発電特性を向上したセルを作製し,5 cm角サイズ,200 lx照射下で210μW,1000 lx照射で1100μWの出力を実現した.
電子機器の小型化,高機能化を実現するための実裝方式の一つとして,部品內蔵基板が注目されている.われわれは,既に導電性ペーストを層間接続に用いたポリイミド多層配線板技術を応用し,薄型WLPを內蔵した能動素子內蔵基板を開発している.本報告では,この能動素子內蔵基板技術を応用し,薄型受動部品を內蔵した部品內蔵基板を開発した概要について述べる.薄型受動部品を內蔵した場合でも基板総厚さ260μmの薄型化を実現している.また,環境試験や曲げ試験から,この受動部品內蔵基板の信頼性について検討した結果を報告する.