バックナンバー Fujikura Technical Review
マルチコアファイバを用いた空間多重伝送の実用化には,増幅技術の確立が不可欠である.増幅媒體であるエルビウム添加ファイバをマルチコア化したマルチコアエルビウム添加ファイバは,マルチコアファイバ用増幅媒體として期待されている.當社では,コア勵起型およびクラッド勵起型の二種類のマルチコアエルビウム添加ファイバの開発を進めている.本稿では,空間多重伝送用に検討されている各種増幅媒體の比較を行うとともに,試作したマルチコアエルビウム添加ファイバの評価結果を示す.
近年の通信容量の増大に伴い光送受信モジュールの小型化が進んでいる.モジュール內で使用される偏波保持光ファイバのとりまわしについても許容されるスペースは狹い.そこで,より小さな曲げ徑で使用した場合でも,偏波クロストークなどの特性が劣化しないPANDA型偏波保持光ファイバを開発した.半徑7.5mmで10回巻いた場合,1550nmでの損失の増加が0.1dB以下であり,偏波クロストークも-40dB以下を維持していることを確認した.
光ファイバ1本あたりの伝送容量をさらに拡大する技術として,マルチコアファイバを用いた空間多重伝送が注目されている.この空間多重伝送の実現には,マルチコアファイバの各コアとシングルモードファイバを接続するファンイン/ファンアウトデバイスが必須である.本稿では,光増幅器用と伝送用の2種類のマルチコアファイバに対して接続損失を低減できるよう異なるアプローチで設計した2種類のファンイン/ファンアウトデバイスの試作結果を報告する.作製したデバイスを短尺のマルチコアファイバの両端へ融著接続して2箇所の接続點を含む光學特性を評価し,いずれのデバイスにおいても,平均挿入損失2.0dB以下,クロストーク-40dB以下という実用的な値を確認した.
経済的かつ効率的に光ファイバネットワーク構築をするため,新規な高密度実裝ラッピングチューブケーブルの開発を行った.本ケーブルは“Spider Web Ribbon”と名付けた新規な12心テープ心線を実裝している.SWRは隣り合う2心のファイバを間欠的に接著したもので,本テープはストライプリングマークが施されることで,心線識別性も向上させている.ケーブル構造を最適化することにより,既存のリボンルースチューブケーブルに比べて外徑で最大40%,重量で最大60%低減し,世界で最も高密度実裝された光ファイバケーブルの開発に成功した.
光アクセスネットワークおよび光インターコネクションの分野で多心光コネクタの要求が高まっている.放送業界においても,映像の高精細化にともない,映像機器間を多心光コネクタにて一括で接続するという要求が出てきている.當社では,光ファイバ通信用多心光コネクタとして実績のあるMPOコネクタの技術を応用し,超高精細映像機器間接続用多心光コネクタを開発した.本光コネクタは,映像機器間接続に現行用いられている電気コネクタであるBNCコネクタと接続方法及びサイズがほぼ同様であり,現行品と同様に使用することが可能である.本コネクタは光アクセスネットワークおよび光インターコネクションで使用する際に要求される環境及び機械特性も満足しており,更に映像機器間接続で要求される繰り返し著脫特性において高い耐久性を実現した.
光ファイバ使用機器內における光ファイバ融著接続部や,光ファイバブラッググレーティングを利用した波長フィルタの被覆除去部には,光ファイバ再被覆裝置を用いて紫外線硬化型樹脂で再被覆することが多い.近年,光ファイバの種類に応じて紫外線硬化型樹脂を変更する頻度が増加したため,光ファイバ再被覆裝置においては紫外線硬化型樹脂の交換作業性改善が求められている.また,成形された再被覆部の形狀に不良があると,長期信頼性を低下させることがあるため,石英ガラス上型と下型のズレに起因する形狀不良の低減も求められている.今回これらの要求に応えるべく,新たな光ファイバ再被覆裝置を開発した.
高出力パルスファイバレーザには,加工対象物からの反射戻り光を遮斷して光源の安定化を図る光アイソレータが搭載されている.光アイソレータにはファラデー回転子と呼ばれる光學結晶が必要となり,これまでは波長1µm帯においてTb3Ga5O12(TGG)単結晶が広く用いられていた.TGGよりも光學特性に優れ,育成が容易であるTb3(Sc,Lu)2Al3O12(TSLAG)単結晶を開発し,さらに量産化のためにより大型かつ高品質となる結晶育成技術を構築した.
ゲームコントローラ用に適した直感的な操作感覚が得られる新構造の感圧メンブレンスイッチを開発した.その荷重-抵抗値特性は,ラバードームおよび電極の設計最適化により,良好な直線性を持つ.本製品はゲームコントローラ以外にも,介護用睡眠センサなどの広い分野への適用が期待される.本稿では,その概要について報告する.
近年,高速大容量無線通信への期待が高まっており,従來のマイクロ波?。ā?0GHz)使用の限界も有り,次期無線通信周波數帯としてミリ波?。?0~300GHz)が注目を集めている.ミリ波帯で使用するアンテナには高利得,低損失,広帯域動作が必要である.また,アプリケーションを考慮すると低コストな構成も重要である.本稿では低損失で高周波用途に適した液晶ポリマー(LCP)基板を用いて60GHz帯で動作するマイクロストリップコムラインアレーアンテナの開発を行ったので報告する.本アンテナはFPCの製造技術であるロールツーロールプロセスで製作が可能であり,大幅な低コスト化が期待される.
あらまし 近年の醫療機器市場において,使い捨て可能な內視鏡や,カテーテルに內蔵してその先端位置確認を行うためのイメージングデバイスに,実現の期待が高まっている.使い捨てとするためには,従來の內視鏡よりも十分に低いコストで抑えることが要求される.また,カテーテルに內蔵するためにはデバイスの小型?細徑化が要求される.これらの要求を実現するために,我々は,TSVパッケージ技術を適用したCMOSイメージセンサによる,低コストかつ極細徑のCMOSイメージセンサモジュールを開発した.開発したイメージセンサモジュールは,撮像部外徑で1.2mmを実現しており,カテーテルに十分內蔵可能なレベルの小型化を実現している.実現したデバイスに対して,各種性能の確認試験,および信頼性試験を行い,醫療機器に適用可能な性能を有していることを確認した.
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