大 橋 正 和
ダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC)は,発電時に騒音が少なく有害物質を排出しないクリーンなエネルギー源である.當社では,DMFCシステムを航空機等の移動體におけるコジェネレーションシステムや,非常用電源等,様々な用途向けに開発を行っている.その結果,出力1kW,最大燃料利用効率80%を達成した.本稿ではDMFCおよびそのシステムに関する技術紹介を行い,參入可能な市場について議論する.
色素増感太陽電池(Dye-Sensitized Solar Cell,以下DSCと記す)は,明るい場所だけではなく,弱い光や拡散光でも優れた発電特性を発揮する太陽電池で,明るい場所,日陰,窓際,屋內照明下などでも使用できるため設置場所を選ばず,エネルギーハーベスティング(環境発電)の分野で最適な発電デバイスとして注目されている.このDSCを搭載したワイヤレス環境センサシステムは,電池交換や配線工事などの煩わしさがなく自由に設置してデータを集めることができるため,スムーズなシステム導入とメンテナンス費用の削減を可能にする.本稿では,DSCを電源に用いた多機能,小型,軽量な室內用の環境センサノードを開発したので報告する.
光を活用したセンシング技術のひとつに,光ファイバセンシングがある.光ファイバ自體をセンサとして用いるこの技術は,航空宇宙,橋梁やトンネルなどの社會インフラ,原子力設備,天然資源の採掘現場などへ応用が広がっている.これらの応用ではセンサが特殊環境下におかれることが多く,光ファイバには計測目的と測定環境に応じたカスタマイズが必要となる.本稿では,センシング用途として開発された特殊光ファイバについて,具體例を挙げながら,その技術進歩を報告する.
ウェアラブル機器の普及により配線に伸縮性が求められている.このニーズにこたえるべくフジクラグループではストレッチャブル配線の開発に取り組んでいる.われわれが開発したストレッチャブル配線は人體表面で発生する最大伸び率50%においても破斷せず導通を維持する電気特性を有しており,人が著用する配線として用いることが可能となっている.
Fiber To The Home(FTTH)網では,加入者引込み配線?宅內配線に,光ドロップケーブル,光インドアケーブルが,數多く使用されている.さらなるFTTH網の普及?発展を目指し,特殊な布設環境への適応,経済的な引込み?宅內配線設備の実現,施工性の向上を目的とした高機能光ドロップケーブル?インドアケーブルを開発した.本稿では,これらの高機能光ドロップケーブル?インドアケーブルを紹介する.
これまで,我々は光ネットワーク網を簡易に且つ経済的に構築する技術として,各種現場組立光コネクタを開発してきた.光ネットワーク網の構築環境の多様化に伴い,使用されるケーブルも多様化しており,主にFTTH向けとして細徑インドアケーブルが海外でも採用され始めている.今回我々は,融著型現場組立コネクタの基本構造を継承し,細徑インドアケーブルに対応したコネクタを開発した.また,海外のFTTHシステムにおいては低反射が要求される場合があり,これに対応するため,低反射タイプのコネクタの開発を行ったので,合わせて報告する.
長距離幹線系においてデジタルコヒーレント光通信システムの運用が始まり,今後は都市間通信網においても普及が期待されている.その実現には光デバイスの小型化と低コスト化が鍵であり,當社ではこのような要求を満たす光デバイスとして,シリコンを材料とする偏波多重?直交遷移位相光変調器の開発を進めてきた.本稿では,変調器駆動用の高周波電気ドライバと共に筐體に実裝したシリコン光変調器モジュールを試作し,伝送速度128Gb/sで1000kmの光伝送を行った結果について述べる.
自動車用ワイヤハーネスの開発において,短時間で解析可能なシミュレーション技術を開発した.本技術は,ワイヤハーネスの経路シミュレーションと屈曲シミュレーションで構成される.さらに3次元CADによる製造設計の効率化手法を同時に開発し,自動車メーカの求める開発のフロントローディングを,より確実に遂行できるようになった.