高溫超電導材料発見30周年を記念して
― 明るい未來に向かって―
イットリウム系超電導線材は,強磁場中でも高い臨界電流特性を有することに加え,強度にも優れていることから,従來材料では実現しなかった20 T以上の磁場に耐える超電導マグネットを構成することができる.本稿では,その応用としての科學研究用強磁場実験設備や1GHz以上の共鳴周波數を用いる超高分解能NMR裝置等の簡単な紹介と,それら強磁場応用へ向けた當社のイットリウム系線材開発のアクティビティーについて報告する.
イットリウム(Y)系超電導線材は20 K以上の高溫で高い磁場中臨界電流を有することから,従來の超電導材料では必要となる高価な液體ヘリウムが不要であり,MRI(Magnetic Resonance Imaging)等のコイル用途での応用が期待されている.今回コイル応用時に大きな問題となる遮蔽電流の抑制を目的とし,マルチフィラメント型イットリウム系超電導線材の開発を行った.その概要を報告する.
イットリウム(Y)系超電導線材は20 K以上の高溫領域でも高い磁場中臨界電流特性を示すことから,コイルに応用することで機器の小型化や高性能化が期待できる.今回,高エネルギー加速器研究機構(KEK)で検討されている加速器用の六極マグネットへのY系超電導コイルの適用検討として,小型のY系超電導コイルの熱的安定性を評価したので概要を報告する.
超電導ケーブルは,高電流密度,低交流損失の特長とともに,省エネルギー,CO2削減効果,外部への磁気遮へい等,環境面でのメリットも有し,大容量(大電流)送電コンパクト型電力ケーブルとしての適用が期待されている.當社はNEDOプロジェクト「イットリウム系超電導電力機器技術開発」の最終年度(2012年度)に世界最大級の臨界電流500A/cm-w(at77K,s.f.)以上を有するイットリウム系線材(IBAD-PLD線材)を初めて66kV5kArms級ケーブルに適用し,目標の低損失化を達成した.今後さらなる大電流化が期待されているが,この際,超電導導體?シールドの損失以外にもケーブル構造各部の交流損失も顕在化してくることが懸念される.
すなわち,大電流超電導ケーブルに特有の導體?シールドの多重コイル構造に起因する內部軸方向磁界によって発生するフォーマ,斷熱管等における渦電流損失等である.ケーブル全體の低損失化をはかるためには,各部の損失低減が必須となる.本稿では,當社におけるケーブル各部の損失低減の方策について報告する.あわせて,楕円関數を用いた解析例も紹介する.
近年,高出力かつ優れたビーム品質をもつレーザ発振器としてファイバレーザが注目を集めている.シングルモードファイバレーザのさらなる高出力化のためには光ファイバの非線形光學効果の一つである誘導ラマン散亂(SRS)の発生を抑制することが重要である.ファイバのパラメータを適切に設計することで, 20 mのデリバリファイバ長を有しながらも,2 kW出力時においてもSRSが十分に抑制され,かつビーム品質に優れたシングルモードファイバレーザを実現した.
キロワット級ファイバレーザの勵起光源として用いられる高輝度レーザダイオードモジュールの開発成果を報告する.レーザダイオードモジュールはファイバレーザの特性を特徴付けるキーデバイスである.當社で開発した高出力レーザのパッケージング技術とオプトエナジー社のレーザダイオード高出力化技術を組み合わせることで世界最高クラスの輝度を達成した.
ファイバレーザの勵起光源として用いられる半導體レーザダイオード素子は,高出力?高効率に加え,長期安定動作が可能な高い信頼性が求められている.我々は,獨自のADCH(Asymmetric Decoupled Confinement Heterostructure)構造を適用し,効率改善と実用出力の向上をめざし,縦構造および電流狹窄構造を含む素子設計の最適化を進めている.本稿では,915 nm帯の発振波長をもつ素子において17 Wの連続安定駆動と60%以上の電力?光変換効率を実現したので報告する.
経済的かつ効率的に光ファイバネットワークの構築をするため,地下配線用に新規開発した8心の間欠接著型ファイバテープ心線“Spider Web Ribbon” (SWR) を用いた2000心高密度光ファイバケーブルの開発を行った.本ケーブルは従來の構造に用いられていたスロットロッドをなくし,SWRを高密度実裝することにより,スロット型1000心ケーブルと同等の外徑にて世界最高レベルの実裝密度を達成している.加えてテープ心線構造とバンドルユニット構造を最適化することにより,優れた一括融著作業性とユニット識別性を有することに成功した.
近年,高速大容量無線通信として60 GHz帯を用いた無線通信が注目されている.60GHz帯での無線通信の応用例の一つとして,キオスクダウンロードのような近距離通信への応用があげられる.アンテナのようなミリ波デバイスには低損失動作と7?9 GHzにわたる広帯域動作が求められる.近距離通信においては,このほかにも無指向もしくは広いビームカバレッジが求められる.本報告では,液晶ポリマー(LCP)基板を用いた60 GHz帯における導波管給電型ダイポールアンテナの設計,および測定結果について報告する.本設計品は60 GHz帯において広帯域動作,かつ広角なビームが得られるため近距離通信に適したものとなっている.
助手席乗員の著座を検知した上で,シートベルト非著用の場合に,警報により著用を促すシートベルトリマインダ(SBR)システムが普及している.當社ではシート表皮とシートクッションの間に配置するメンブレンスイッチからなるSBR用センサを生産しているが,近年になり顧客からセンサの標準化を目的として,シートクッション下に配置するSBRセンサの開発要求があり,金屬フィルムを用いた荷重検知型SBRセンサを開発した.