梶 智 晃
富 川 浩 二
大 里 健
データセンタでは膨大なデータを集中的かつ効果的に管理する必要がある.そのためには,限られたスペースの中で,光ケーブルを超高密度かつ経済的に配線することが求められる.光ケーブルの超高密度化,多心化技術として,近年,Spider Web Ribbon®(SWR®)が開発?製品化され,これを用いたWrapping Tube Cable®(WTC®)が拡大している.
本稿では,SWR/WTCTM技術をさらに進化させ,200 μmファイバを実裝した超高密度WTCや優れた難燃特性を有する屋內向けWTCを開発し,これらのケーブルとSWR/WTC向け光コンポーネントを用いた革新的データセンタ配線ソリューションを紹介する.
Spider Web Ribbon(SWR)と呼ばれる革新的な光ファイバリボンを実裝したWrapping Tube Cable(WTC)技術を適用した高密度実裝ケーブルが開発され,既に実用化されている.
SWR/WTCのさらなる拡大を目指し,これまで適用されていなかったケーブル品種として,空気圧送布設に対応したケーブルの開発に取り組んだ.
SWR/WTC技術に,新たな外被設計を融合させ,空気圧送性能をはじめとした要求性能を満足するSWR を実裝した空気圧送用WTC を開発した.
近年,金屬加工用途における高出力ファイバレーザの需要が拡大している.金屬加工にはキロワットを超える高い出力が必要である.一般的には出力が高いほどより高速な加工ができることから,レーザ加工機メーカから高出力化の要求が強い.當社グループではファイバレーザに必要な主要技術をすべて保有しており,これまで出力8 kWまでのファイバレーザを開発,製品販売してきた.今回,高出力勵起光源,光回路,伝送ケーブルなどの主要な光學部品を新たに開発,設計し,12 kWマルチモードファイバレーザの開発に成功した.
金屬加工を主な用途としたCWファイバレーザのさらなる高出力化に伴い,高い反射光耐性を有した伝送ケーブルが求められる.當社では,獨自構造の採用により,反射光耐性に加えて,機械的な堅牢性にも優れた伝送ケーブルを開発した.
V - band帯域のスロット結合型のマイクロストリップパッチアンテナを開発した.本アンテナは2 層基板のボトム面に給電線部があり,中間のスロット部を通じて,トップ面のパッチアンテナ部へ給電される仕組みとなっている.本アンテナは59 ~ 63 GHzで反射が−10 dB以下の整合が取れており,最大利得も単體で14 - 15 dBi,16 アレイで24 dBi以上の高利得を実現している.ビームフォーミングは水平方向に±45 °の範囲を想定し,動作周波數はIEEE 802.11.ad のチャネル2,3 をカバーしている.
RE系超電導線材は,高溫?高磁場領域で高い臨界電流特性を有し,様々な超電導機器への応用が期待されている.超電導層に人工ピンと呼ばれる不純物を導入することによって,磁場中の臨界電流特性が向上することが知られている.當社では,人工ピンを導入した超電導線材の開発を進めており,量産化のために試作?評価をおこなったので概要を報告する.
イットリウム(Y)系超電導線材は20 K以上の高溫領域でも高い磁場中臨界電流特性を示すことから,コイルに応用することで機器の小型化や高性能化が期待できる.しかし,コイル応用において線材テープ面垂直方向の剝離強度が比較的弱いことが課題であった.そこで,これまで定量的な評価が困難であった長尺線材の剝離強度測定方法を開発したのでその方法について報告する.
AI技術のひとつであるディープラーニングは近年急速な進歩を遂げ,様々な産業分野への応用が期待されている.當社では,ディープラーニングによる畫像認識技術を半導體レーザウエハの外観検査に応用し,獨自のネットワーク構造を構成し學習データの選定を行うことで99%を超える判定精度を達成した.既にこの外観検査システムは半導體レーザの製造工程に導入,安定的に運用されている.また,本技術は圧著端子の外観検査についても応用を進め判定精度99%以上を実現している.
無機イオンの分析裝置であるイオンクロマトグラフは,一般的に陽イオンと陰イオンを別々の分離カラムと裝置を用いて分析することになるほか,保持時間が近接する成分がある場合,定性分析は困難となることもある.そこで我々は,イオンクロマトグラフ代替手法の一つとして,液體クロマトグラフ誘導結合プラズマ質量分析計による各種検討を行ったところ,無機陽イオンと陰イオンについて選択性に優れた一斉分析が可能であることを見出した.
今年7 月22 日から施行される改正RoHS指令では,禁止物質にフタル酸エステル類4 種が追加されることから,製造拠點での受入検査體制の構築が急務となっている.IECの公定法IEC 62321 - 8 に記載されたスクリーニング法(熱分解/ 熱抽出- GC/MS(Py/TD - GC/MS)法)は分析精度やトレーサビリティに優れた手法であるものの,裝置導入コストが高く裝置管理に専門性を要することから,拠點展開には不向きである.そこで薄層クロマトグラフ(TLC)法および直接試料導入- 質量分析(DI - MS)法について検討を行った.いずれの手法も十分な検出感度が得られることが明らかとなったが,スクリーニング法として導入するうえでいくつかの問題も確認された.スクリーニング法の選択は,コスト?精度?操作性等を考慮し,総合的に判斷することが重要である.