バックナンバー Fujikura Technical Review
5 Gで期待される要求要件とそれを支える技術
第 5 世代移動通信システム( 5 G)のサービスがいよいよスタートし,生活と仕事の両方に様々なアプリケーションや新しいビジネスが期待されている. 5 Gは 3 G / 4 G のモバイル通信の高速化?大容量化にとどまらず,あらゆるモノをネットワークでつなぎ,高信頼かつ低遅延で制御する次世代のインフラとして,通信サービスを劇的に進化させる目標で進められている.本稿は 5 Gが実現しようとしている要件,それにともなう使い方や將來で予想される利用形態などに觸れ,それを支える技術として主にミリ波技術開発の観點から述べる.
ミリ波用配線板材料技術
移動體通信ネットワークの分野では第 5 世代通信( 5 G)の商用サービスが開始され,周波數が 30 GHzを超えるミリ波が電子機器內で使われはじめている.ミリ波は広い周波數帯域が利用できるため,ネットワークの高速大容量化が可能であるが,従來の電子配線基板では伝送損失が大きいため信號を効率よく扱えないという課題がある.これを解決するためには,ミリ波に適した配線板技術が必須であり,本稿では配線板材料技術を中心にミリ波で求められる配線板について概説する.
5 G通信向け 低損失?狹帯域な28GHz-帯域通過フィルタ
28 GHzの高性能な 2 GHz 帯域幅(比帯域幅 7%)を持つ狹帯域で低損失な帯域通過フィルタ(BPF)を第 5 世代通信(5 G)用途として初めて開発した. フィルタは合成石英ガラスで構成されたポスト壁からなる円柱狀の共振器で構成されており, 使用した合成石英ガラスの誘電正接は 44 GHzにおいて 0.00036 である. 製作した帯域通過フィルタの大きさは 11 × 10 mm2 , 入出力構造を含まない挿入損失は 0.5 ~ 0.8 dBであった. 開発したガラス導波路の入出力構造に関しても述べる.
Vバンド帯アレーアンテナ
液晶ポリマー(LCP) 4 層基板を用いて 57 ~ 71 GHzで動作するアレイアンテナを開発した.水平方向のみ広いビームフォーミング範囲を可能とし,各アンテナ素子として比較的高い利得を実現するために, 4 つのパッチを 1 列に並べたサブアレイアンテナを使用する.周波數による放射方向の変化を防ぐために,各サブアレイアンテナには中央から給電している.層構成は下から,配線層,グランド,アンテナ層,アンテナ層からなる.S 11 は 57 ~ 71 GHzで- 10 dB程度であり,利得が 9 dBi程度であった.
液晶ポリマー(LCP)を用いた 28 GHz帯バンドパスフィルタ
液晶ポリマー(LCP)による 3 層基板を使った 3 種類のストリップライン型バンドパスフィルタ(BPF)を開発した.一つ目は透過帯域外の不要放射を大きく抑圧できる 5 段のチェビシェフ型,二つ目は透過損失が小さい 4 段のカノニカル型フィルタ, 三つ目は急峻な透過特性を持つ 6 段のカノニカル型フィルタである.本稿では,まずは結合行列を使用しフィルタの結合トポロジーの違いにより,無負荷Qよる損失と選択性の変化を比較する.その後,電磁界シミュレーションにより設計を行い,製造し測定した結果を述べる. 5 段チェビシェフ型, 4 段カノニカル型,6 段カノニカル型の挿入損失はそれぞれ 3.1 dB, 2.2 dB, 2.8 dBであり, 25 dB抑圧帯域は 5.5 GHz, 5.8 GHz, 4.6 GHzであった.
第 5 世代移動通信システム用ミリ波帯RFICとその半導體技術
本稿では,第 5 世代移動通信システム用ミリ波帯RFICに用いられる半導體技術について述べた.具體的には,半導體の主流であるBulk CMOS技術,Bulk CMOSの高周波特性を向上させたSOI CMOS技術,Bipolar技術をベースに高周波特性を向上させたSiGe BiCMOS技術について解説した.また,それぞれの技術を用いて作成されたミリ波帯RFICの例を取り上げた.
5 G向け新周波數帯にも対応した 60 GHz帯広帯域通信モジュール
60 GHz帯は高速大容量,多接続の通信に適した広帯域なチャネル周波數帯を持つことから今後適用の拡大が期待されている.適用が期待される分野としてはFWA,モバイルバックホール,エンタープライズ,V 2 X等が考えられる. このような分野の內,特にV 2 Xでは高速大容量,多接続だけでなく,高速な接続やハンドオーバーも求められる. 當社ではこのような多様なアプリケーションに対応し,かつ 5 G向け新周波數帯を含む 60 GHz全帯域をカバーする 60 GHz帯広帯域通信モジュールを開発した.
5 G基地局に用いる光コネクタ
近年,スマートフォン等の普及や動畫像転送等の利用拡大により,通信量が増大している.それに伴い第 5 世代移動通信システム( 5 G )の早期普及が急務となっており,基地局の構築が活発に進められている.迅速に光ファイバの配線をするため品質がよく設備投資を抑制することが可能な現場組立光コネクタを開発したので報告する.
AI化推進方法と、実現に向けた技術開発
ディープラーニングを主としたAI導入は進みつつあるが,製造工程に対してはPoCに留まることが多い.當社では,製造工程へのAI導入を効率的に進めるためのAIロードマップを作成し,これに基づきAIシステムの検討/開発/導入/運用を進めている.本稿では,當社のAI取組みの進め方,具體的案件の內容,案件を実現するために開発した技術について説明する.また, 5 G等の新技術動向を踏まえ,AIシステムアーキテクチャの方向性を考察する.
長距離伝送に適した低損失大Aeff光ファイバ
長距離幹線系を中心に大容量伝送を可能にするディジタルコヒーレント技術の普及が進んでいる.ディジタルコヒーレント技術を用いたシステムで要求される光信號対雑音比(OSNR)の改善を可能にする光ファイバとしてITU-TからG. 654.Eカテゴリ1)が勧告されている.今回,當社ではITU-T G.654.Eに準拠したFutureGuide®-HSC-110 とFutureGuide®-HSC-125 を開発した.本開発品は低い伝送損失と大きな実効コア斷面積(Aeff)を有しており,HSC-110 は高密度でケーブルに実裝できること,HSC-125 は高い光ファイバ性能指數(FOM)を持つことを特長としている.両光ファイバともマクロベンドおよびマイクロベンドによる損失が低いことから,幅広い構造のケーブルに適用可能である.
フジクラグループの高出力半導體レーザ技術
フジクラグループでは高出力半導體レーザおよびレーザモジュールの製品群の開発を通じてIII-V族化合物半導體材料の高品質結晶成長技術,LD構造の最適化による高出力化?高効率化技術,空間光學?ビーム多重化技術,実裝技術,放熱技術など膨大な技術やノウハウを蓄積してきた.本稿ではこれまでに當社が開発した高出力半導體レーザ製品群の特性と,それらに使用される技術を紹介する.
150 kW超級CHAdeMO液冷充電ケーブルコネクタ
近年,EVに搭載されるバッテリの大容量化にともない,バッテリへの充電時間の短縮が強く望まれており,直流急速充電器の高出力化のニーズが高まっている.そのため,直流急速充電器の高出力化に対応した充電ケーブルコネクタが求められ,その実現には冷媒の循環によって強制冷卻する液冷技術の適用が必須となっている.そこで,當社は,CHAdeMO 2.0 に適合した 150 kW超級の直流急速充電器向け液冷充電ケーブルコネクタを開発した.本論文では,開発した液冷充電ケーブルコネクタにおいて,適用した液冷技術と冷卻性能の評価結果を中心に述べ,目標とする冷卻性能を実現したことを報告する.
素粒子実験向け微細配線FPC
近年のフレキシブルプリント配線板(FPC)の技術の進歩は, スマートフォンやウェアラブルデバイスをはじめとする各種電子機器の高機能化,小型化に大いに貢獻してきている.これまでこれらの機器において培われた技術力を基礎に, 現在の量産レベルよりも高いレベルを求められる學術用途のFPCの開発にも取り組んでいる.本稿では, その一例として素粒子実験 J-PARCミューオンg-2/EDM実験用測定器に使用される微細配線FPCの開発を紹介する.
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